【民間保険は必要?】介護保険の基礎知識
- 2023.08.08
- お金の教養
2021年4月に、介護保険料の全国平均が初めて6,000円台を突破し、20年間でその額は倍増しました。
この保険料の上昇により、介護保険や民間の介護保険に関する疑問も増えているかと思います。
・「介護保険料を安くする方法は無いのかな?」
・「民間の介護保険には入っておいた方がいいのかな?」
介護保険料の支払いは、40歳からですが、実はどんどん金額が上がってきています。
日本では、少子高齢化が進むことで、社会保険や税金の負担がますます増加しています。
・社会保険料の増加
→ 健康保険組合の加入者は、10年間で1人あたり平均で約13万円保険料が増加。
・介護保険料の増加
→ 20年間で負担金額の平均は約2倍に。
・給与所得控除の縮小
→ 2020年1月から、一部の高所得者に対する所得税の実質的な増税。
・消費税の増税
→ 2019年10月に標準税率が8%から10%へ。
介護保険については、支払いが40歳から始まるため、実際に理解している人は少ないかもしれません。
さらに、介護費用への備えとして、民間の介護保険を検討している方も多いと思います。
この記事では、下記について学ぶことができます。
・介護保険の基本
・介護保険のよくあるQ&A
この記事を読むことで、介護保険に関する重要なことを理解し、介護費用に備える方法がわかると思います。
よくあるQ&Aでは、民間の介護保険をおすすめしない理由も解説していきます。
介護保険について、しっかり学んでいこう♪
介護保険とは
介護保険制度の概要
介護保険とは、介護が必要な人が介護サービスを受ける際に、原則的に1〜3割の費用負担で済む公的な保険制度です。
厚生労働省の調査によれば、2021年6月末時点での要介護認定者数は下記のようになっています。
・要介護認定者数:686万人
→ 男性:218万人
→ 女性:468万人
・第一号被保険者に対する65歳以上の認定者数の割合:約19.1%
65歳以上の「約5人に1人」は要介護認定を受けているんだね…
介護保険を詳しく理解するために、下記の3つの要素を確認していきます。
①基本的な仕組み
②保険料
③財源
知っておくべき介護保険の3つの要素
要素①:基本的な仕組み
まずは、基本的な仕組みを確認していきます。
・加入者(被保険者)
・市区町村(保険者)
・介護サービス提供事業者
まず、加入者は介護が必要な状態になると、市区町村で要介護認定を受けることになります。
認定を受けた後、介護サービス提供事業者から介護サービスを受けることができます。
また、介護のために住宅の改修(例えば手すりの設置やバリアフリー化など)も行うこともあります。
このような介護サービスを受けたり、介護のために住宅改修を行ったりした際、私たちの負担を支えてくれるのが介護保険です。
市区町村は、介護保険料の徴収や要介護認定を行い、また、皆さんが利用した介護サービス提供事業者の請求に応じて、費用の7〜9割を支払います。
例えば、ヘルパーさんに下記のような手助けを依頼し、それに対してサービス料が発生したとします。
・掃除、洗濯
・買い物、お出かけ
・料理、食事
・入浴
皆さんは費用の1〜3割を負担し、残りの9〜7割は市区町村が支払ってくれます。
負担割合は所得額によって異なりますが、仮に1割の場合、支払いの例は下記のようになります。
・サービス料の合計:50,000円
・自己負担分:5,000円(1割)
・市区町村:45,000円(9割)
介護保険は、40歳以上の人が介護保険料を毎月納付して、将来介護が必要になったときのために支え合う仕組みです。
利用者は年齢に応じて2つのグループに分けられます。
・第1号被保険者:65歳以上
・第2号被保険者:40〜64歳
65歳以上の第1号被保険者は、介護保険料を支払いながら、要介護状態になった場合に介護保険サービスを利用することができます。
40歳から64歳の第2号被保険者は、介護保険料を納付し、65歳以上の人々をサポートします。
どちらのグループも保険料を納める義務がありますが、介護保険サービスを利用できるのは原則として65歳以上の第1号被保険者に限られます。
ただし、40歳から64歳の第2号被保険者は、特定疾病と呼ばれる疾患のいずれかに罹患した場合には介護保険サービスを利用することができます。
基本、40〜64歳の人はお金を払うだけなんだね。
介護保険の概要をまとめると、下記の通りとなります。
・40歳になると、介護保険の被保険者になる。
・65歳になるまでは、コツコツと保険料を納める。
・65歳を過ぎ、要介護状態だと認定されると、介護保険の恩恵が受けられる。
→ ただし、40〜64歳でも例外はある。
・介護サービス利用時の負担額は1〜3割で済む。
→ 現金が給付される訳ではない。
要素②:保険料
次に、介護保険料について説明します。
介護保険料は、「標準報酬月額 × 介護保険料率」という計算式で算出されます。
標準報酬月額は、大まかに言えば4月から6月の給与の平均額を指します。
ですので、「4〜6月の給与の平均 × 介護保険料率」ということです。
この平均額に介護保険料率を乗じることで、具体的な介護保険料が算出されます。
介護保険料の徴収は健康保険や厚生年金と同じで、給与から天引きされるね!
また、国民健康保険に加入している個人事業主やフリーランスの場合、毎年支払う国民健康保険料には介護納付金も含まれています。
そして介護保険料率は、どこの健康保険に加入しているかで異なります。
・大企業の健康保険組合
・協会けんぽ
・国民健康保険
例えば、協会けんぽの令和3年度の介護保険料率は全国一律で1.82%となっています。
協会けんぽの場合、月給30万円の方の介護保険料の自己負担額は約2,700円程度です。
また、大企業の健康保険組合では、2021年の介護保険料率の平均が1.77%と発表されています。
要素③:財源
最後に、財源についてです。
皆さんが介護サービスを利用されても、原則として自己負担は1〜3割で済むことになっています。
では、残りの7〜9割は一体どこから出ているのか確認します。
介護保険の財源は、保険料が50%、税金が50%です。
保険料だけでは十分に賄えないため、以下のように様々な資金源からの補填が行われています。
・国の税金:25%
・県の税金:12.5%
・市の税金:12.5%
介護保険についての基礎知識まとめ
まず、介護保険に関わる人達は加入者と市区町村と介護サービス提供事業者です。
・加入者(被保険者):40歳から保険料を納付し、原則65歳以降に給付を受ける。
・市区町村(保険者):保険料の徴収や、要介護認定をする。
・介護サービス提供事業者:介護サービスを利用者に提供する。
原則として、65歳以上の加入者が要介護認定を受けると、介護サービスを1〜3割の負担で利用することができます。
介護保険料率は、「標準報酬月額 × 介護保険料率」という方法で算出されます。
標準報酬月額は、おおよそ4月から6月までの給与の平均額ですので覚えておきましょう。
介護保険料率は一般的には1.82%程度ですが、会社員の方は会社と折半するので、支払う金額はその半分になります。
そして、保険料率は所属する保険組合によって異なります。
また、財源については、保険料だけでは不十分ですので、保険料50%と税金50%で賄われています。
介護保険に関するよくある質問
介護保険の基本を押さえた上で、介護保険に関する4つの疑問に対して解説していきます。
その1:介護保険料率について「高いの?低いの?」
介護保険料率は、協会けんぽの場合だと1.82%です(2023年6月現在)。
確かに数字だけを見ればあまり高いとは思わないかもしれませんが、伸び率に注目してみましょう。
・2000年:2,911円
・2023年:6,014円
約20年の間に、介護保険料は約2倍に増加しました。
これからも少子高齢化が進行することを考慮すると、保険料率は引き続き上昇するでしょう。
なお、日本の人口は2065年までの約40年間で、下記のように変化すると予想されています。
2065年までには、65歳以上の高齢者の割合は現在の29%から38%になる見込みです。
高齢者の数自体は減るかもしれませんが、高齢者を支える現役世代の人数は約2,600万人減少すると予想されています。
これから先、介護保険料率が低くなる、もしくはそのままの可能性は少ないかもしれません。
その2:介護保険を安くする方法は「あるの?ないの?」
社会保険料と同様に、会社員である限り、基本的には介護保険料を安くする方法はありません。
給与から天引きされる税金や社会保険料の仕組みを確認していきます。
●税金はある程度コントロールが可能
住民税や所得税などの税金は、課税所得に対して課せられるものです。
・売上(収入)ー 経費 = 所得
・所得 ー 控除 = 課税所得
→ 課税所得 = 売上(収入)ー 経費 ー 控除
個人事業主の場合は経費が認められる一方、会社員の場合は基本的に経費は認められていません。
したがって、会社員の場合は「課税所得 = 給与 ー 控除」と簡単に考えることができます。
つまり、控除を増やし課税所得を減らせば、税金の負担も下げられるね!
●社会保険料はコントロールができない
社会保険料は税金とは異なる仕組みです。
なぜなら、社会保険料は課税所得に対して課されるのではなく、標準報酬月額、すなわち4月から6月の平均給与に対して徴収されるからです。
控除を増やしても社会保険料を減らすことはできませんので、仕組み上、給与を減らさない限り、会社員が社会保険料を安くすることは難しいです。
社会保険料を安くすることは難しいですが、お金を手元に残す方法はあります。
実は、会社員の人が副業で得た事業所得には、社会保険料がかかりません。
例えば、給与所得が300万円で事業所得が700万円の場合、社会保険料は給与所得の300万円に対して徴収されます。
給与所得だけで1,000万円を稼ぐ場合と、給与所得と事業所得を合わせて1,000万円を稼ぐ場合では、社会保険料に差が生じるのです。
✅給与所得1,000万円
→社会保険料:約117万円
✅給与所得300万円 + 事業所得700万円
→社会保険料:約44万円
同じ年収1,000万円でも、手取り額には大きな差が生じることがわかります。
さらに副業で得た事業所得の場合、給与所得では認められない経費も利用できるため、効率的に手元にお金を残すことができます。
特に、家賃や電気代などの「生活費の一部」も経費として計上できるメリットがあります。
ただし、経費として計上できるのは事業に関連するものに限られますので、無関係な費用を経費として計上すると脱税になることに注意しましょう。
その3:民間の介護保険について「必要?不要?」
結論として、民間の介護保険はおすすめできません。
その理由は、介護保険は国や市町村ですら運営が難しく、保険会社にとっても割に合わない保険となっているからです。
保険は本来、起こる確率は低いものの、生活が困窮するようなトラブルに備えるために存在します。
そのため、生命保険や自動車保険など、「加入はしているが利用することはなかった」という人が多いのが一般的です。
保険会社のビジネスモデルは、多くの人から保険料を集め、少数の人に給付することによって成り立っています。
しかし、介護の必要な状態になる可能性は年齢とともに高まるものであり、起こりにくい事故や病気とは異なります。
介護保険では、多くの加入者が給付を申請し、保険を利用することになります。
そのため、保険会社は商売として成り立たせるために、加入者から高額な保険料を徴収せざるを得ません。
保険は、使用しない多数の人と使用する少数の人が存在することによって成り立っています。
多くの人が給付を受ける保険で、全員が利益を得るような保険を作ろうとすると、保険会社にとっては収益が得られません。
そのため、利用者にとって「良い介護保険」を見つけることは難しいかもしれません。
だから、民間の介護保険はおすすめできないんだね…
介護が必要になるリスクは、保険ではなく資産を蓄えてカバーすることが重要です。
その4:介護費用について「いくらかかる?」
「民間保険に入っておかないと、いざというときお金が足りなくなるのかな?」と考える方もいますが、若いうちから貯蓄に努めることで介護費用に備えることはできます。
平成30年度の「生命保険に関する全国実態調査」によると、介護の平均費用と期間は下記の通りです。
・一時費用:74万円
・月額費用:月8万3000円
・介護期間の平均:約5年
→ 介護費用の合計:約570万円
介護にかかる費用や期間は個人によって異なりますが、公的介護保険の存在を考慮すると、一時的に570万円ほどの貯金があれば十分と言えます。
毎年40歳から23万円ずつ貯金すれば十分な計算ですので、月額では約2万円となります。
先ほど解説したように、民間の介護保険はおすすめできないので、その分を貯金に回しましょう。
これにより、月に2万円の貯金が現実的な目標となるはずです。
民間の介護保険よりも、自身の資産をしっかりと築いていこう!
まとめ
この記事では、介護保険の基本と介護保険のよくある疑問への回答を解説しました。
・介護保険の基本
・介護保険のよくあるQ&A
大企業の健康保険組合では、2021年の介護保険料率の平均が1.77%と発表されています。
また、協会けんぽの令和3年度の介護保険料率は全国一律で1.82%となっています。
消費税の引き上げや一部の高所得者の所得税の実質的な増加、税金や社会保険料の負担の増加については、皆さんも実感されていることでしょう。
国の政策に対して不満を抱くだけでなく、自ら行動するかどうかは人それぞれですが、現代のルールを理解しておくことは非常に重要です。
また、介護保険は国や地方自治体でも運営が厳しくなっており、今後も負担が増えたり給付条件が厳しくなったりする可能性が高いことは容易に想像できます。
・保険料率の引き上げ
・給付の抑制
保険の仕組みを考慮すると、介護保険は民間の保険会社からしても成功する可能性は非常に低いと言えます。
多くの人が給付を受けることになると、保険加入者からの負担金も多くしないと回らなくなるからです。
民間保険ではなく、個人の資産を蓄えることがおすすめだね!
統計データによれば、介護費用として570万円を備えておくことが安心の基準とされています。
仮に40歳から25年間で570万円を貯める場合、月に約2万円の貯蓄で達成できます。
民間の介護保険に加入する代わりに、貯金をすることや固定費の見直しを行うことで、現実的な目標を達成することが可能です。
社会の仕組みや制度は絶えず変化していくものであり、すぐに変えることも簡単ではないため、怒ったり嘆いたりするだけでは解決策は出てきません。
所得税や住民税、社会保険料などは今後も上昇し続けるでしょう。
政治や国に期待を寄せるのも一つの方法かもしれませんが、確実に変化をもたらせるのは自分自身です。
自分がコントロールできないことに期待するよりも、まずは自分ができることを実践していくことが重要です。
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