【わかりやすく解説】日銀がETF売却へ!100年以上かかる金融緩和からの脱却とは?

金融ラボ

2025年9月19日、日銀が大きなニュースを発表しました。
それは――
これまで買い支えてきた株(ETF)を、これから少しずつ売っていくというもの。

「ETFを売るのに100年以上かかる」
「株価に影響が出るのでは?」
「そもそもETFってなに?」

初心者の方にとっては、正直ちょっと分かりにくいニュースですよね。

この記事では、

  • 今回の日銀の決定は何を意味するのか
  • 「100年以上かかる」ってどういうことなのか
  • 株価や私たちにどんな影響があるのか

を、できるだけやさしく解説していきます!

日銀が決めたことは?

2025年9月19日、日銀は金融政策決定会合を開き、以下の決定をしました。

  • 政策金利は現状維持(0.5%程度)
    → 追加利上げは見送り。これで5回連続の据え置き。
  • ETF(上場投資信託)の売却を開始
    → 日銀はこれまで株価を下支えするために大量のETFを買ってきました。その総額は簿価ベースで約37兆円
    来年初めから、年間3300億円分を市場で売却していくと発表
  • REIT(不動産投資信託)も売却へ
    → 年間50億円ずつ売却。
💡日銀会合とは
日本銀行が、金利やお金の流れ方をどうするかを決めるために開く会議です。
「金融政策決定会合」と呼ばれ、年に8回ほど行われます。ここでの決定は、日本の経済や株価、為替に大きな影響を与えます。
💡政策金利とは
日銀が「お金を借りるときの値段」として基準にする金利のこと。
この金利が上がると、企業や個人が銀行からお金を借りにくくなり、景気が冷えやすくなります。
逆に金利を下げると、お金を借りやすくなって景気を刺激しやすくなります。
💡ETFとは
「上場投資信託」のこと。
日経平均株価やTOPIXといった株価指数に連動する投資商品で、株を詰め合わせたパックのようなもの。
日銀はこのETFを大量に買って、株価を下支えしてきました。
💡REITとは
「不動産投資信託」のこと。
オフィスビルや商業施設などの不動産に投資して、その賃料収入などを投資家に分配する仕組み。
株ではなく“不動産版の投資パック”とイメージするとわかりやすいです。

100年以上かかるワケ

植田総裁は会見で「このペースで売却すると単純計算で100年以上かかる」と説明しました。
つまり、日銀が持つETFはあまりに巨大で、一気に売ると株式市場が大きく混乱してしまうため、超ゆっくり時間をかけて処分していくということです。

ただし、19日の東京市場では「株が市場に流れすぎて需給が悪化するのでは?」という不安から、日経平均が一時急落しました。

なぜ今、ETFを売るの?

① 金融緩和からの脱却を本格化するため

  • 日銀は2010年代から株価を下支えするためにETFを買い続け、いまや世界で最もETFを持つ中央銀行になっています。
  • しかし、金利を正常化し、金融政策を「異常な緩和モード」から戻す動きが進んでいる以上、ETFの売却もその流れの一部です。
  • ETFを抱えたままでは「いつまでも株価を日銀が支えている状態」が続いてしまうので、金融政策を健全化する一歩として売却が必要。

日銀が筆頭株主なのがたくさんあるんだっけ?

A. はい、その通りです。
日銀はETFを通じて大量の株を保有してきたため、トヨタやソニーなど大企業を含め、多くの会社で「事実上の筆頭株主」になっています。
ただし、日銀が直接経営に口出しすることはなく、信託銀行を通じて議決権を行使しています。
それでも「中央銀行が大株主」というのは異例で、市場のゆがみを生むと長年指摘されてきました。
今回のETF売却は、この異常な状況を少しずつ正常に戻す意味もあります。

💡金融緩和とは
お金を世の中にたくさん流すことで、景気を良くしようとする政策です。
金利を下げたり、国債や株(ETF)を日銀が買ったりして行います。
簡単にいうと「景気を回すためにお金の蛇口を開けること」です。

② 株価が高い時期にこそ売りやすい

  • 今の日本株は史上最高値圏
  • もちろん「株価が高いから売った」とは日銀は否定していますが、裏を返せば株価が低迷している時に売ると市場への悪影響が大きいため、相対的に今は動きやすい環境。
  • 株価がしっかりしているうちに少しずつ売却を始めたほうが、市場へのショックは小さくなると考えられます。

今って株価が高い状態なの?

A. はい、かなり高い水準にあります。
2024年以降、日本株は海外投資家の買いが集まり、日経平均は史上最高値を更新しました。

  • バブル期(1989年)の高値を超えた
  • トヨタやソニーなど大手企業の業績が好調
  • 円安によって輸出企業が有利になった
    こうした要因で株価は高い位置にあります。

だからこそ、日銀がETFを少し売っても市場が耐えられると考えられているわけです。

③ 実務的に準備が整ったから

  • 日銀は「大量の株をどうやって売るか」というノウハウをこれまでに蓄積してきました。
    → 金融機関から株式を引き受ける過程などで、処分方法の知見を得た。
  • そのため「市場に過度な影響を与えない形で売却できるメドが立った」と判断。
  • これは「今ようやく実務面で売却をスタートできる環境になった」という意味。

💡まとめると、

  • 金融政策の正常化を進めたい
  • 株価が高い今なら市場に与えるショックを和らげられる
  • 売却のノウハウが整った

この3つが重なったタイミングだからこそ「今」なのです。

金利引き上げはどうなる?

  • 日銀は「物価が安定的に上がるか」を見ながら利上げを続ける方針。
  • ただし、米国の「高関税政策」が日本や世界経済にどんな影響を与えるかはまだ不透明で、その見極めに時間がかかるとしています。

会合では、一部の委員が0.75%への利上げ提案をしましたが、賛成多数を得られず否決されました。

初心者向け🔰まとめ

  • ETF売却決定=金融緩和からの出口を加速
  • ただし売却ペースは超スロー。100年以上かかる規模
  • 株価への影響は「需給悪化の懸念」あり
  • 金利は0.5%で据え置き → 米国の高関税が不確実要因
  • 利上げは今後も続く可能性大だが、スピードは慎重に

今後の注目ポイント💡

  • ETF売却が市場にどんな影響を与えるか?(株価の変動)
  • 米国の高関税政策が日本経済にどう響くか?
  • 次回会合で「利上げ再開」があるか?